最新更新日:2024年05月01日

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留学を考えている皆様へ~留学事業者の認証制度スタートについて

3年前。
大手留学会社のゲートウェイ21社が倒産し、同社と契約して留学出発準備中、あるいは、すでに留学中の数百名の学生が、払ったはずの授業料が同社の赤字補てんに使われていたため、希望の留学に行けなかったという被害が出てしまいました。
 
その翌年には、やはり大手のサクシーオ社が倒産。こちらでも、やはり、留学待ちの契約者が泣きを見たといいます。
 
ここ数年、日本から海外留学する人の数が減少しているといわれ、その理由が上記にあるわけではないけれど、「どんな留学会社を選んだら安心なのか。」その答えは見つからずじまいでした。
 
なにしろ、留学会社というのは、免許制や認可制ではないため、設立することは簡単。むろん、その後、事業を軌道に乗せるためには、確かな情報収集力、不安な心理をやわらげモチベートするための人間的説得力(カウンセリング力と言い換えてもいいかもしれない)、現地にプッシュできる交渉力と語学力、煩雑な留学手続きを確実にこなすための文書処理力など、広範囲な能力が備わっていなければ到底つとまらない事業なのですが、消費者にとってはどんな基準で業者の良しあしを判断すればよいか、その尺度がありませんでした。
 
本日、正式に発足が発表された「一般社団法人 留学サービス審査機構(Japan Commission for the Regulation of Overseas Study services 略称:J-CROSS、以下「J-CROSS」)」では、一定のルールを設け、留学事業者がそのルールを満たすかどうかを審査し、満たしている場合には認証を付与するという取り組みを始めることになりました。
 
J-CROSSは、消費者庁、文部科学省、外務省、経済産業省、観光庁などの行政機関の指導のもと、一般社団法人海外留学協議会(JAOS)、留学・語学研修等協議会(CIEL)、NPO法人留学協会の3団体が協働して発足します。
 
この認証制度、第一期申請業者は50~100社になるだろうと推定されます。
合格基準の主なポイントは5点。
 
1.重要事項の説明義務を果たしているか
2.契約書の交付を書面で行っているか
3.契約の変更・解除-消費者契約法第9条に基づいているか、また、クーリングオフの考え方を適用し、契約締結日より起算して8日を経過する日までは無条件に解除できるような契約になっているか。
4.広告・パンフレット等の表示は正当か、不当景品類及び不当表示防止法の規定に反する表示を行っていないか
5.前受け金の保全は適切か
 
認証基準全文はこちら(http://www.jcross.or.jp/standard/
 
なかでももっとも重視しているのは、J-CROSSの発表によると、5.の前受け金保全だといいます。
そのため、今回の認証にあたっては公認会計士が決算書のチェックを行うなど、事業者が健全な財務状況にあるかどうかを審査することになります。冒頭で触れたように、留学生はお金を払ったはずなのに、実際には海外の学校に授業料やホームステイ代が送金されておらず、授業が受けられなかったり、志半ばで帰国せざるを得なかったというケースを防ぐためです。
 
今後は、認証制度の広報活動の傍ら、約2ヶ月間にわたって第一期申請と認証を行う予定。早ければ年明けには「認証マーク」が付与され、消費者は、留学会社のホームページやパンフレットで「認証マーク」を目にする機会が出てくるでしょう。
 
認証制度については全国の消費生活センターが周知するほか、教育委員会、高校、大学からも注目されています。また、経済産業省からは国内の語学学校への広報、観光庁からは旅行業者への告知、特定非営利活動法人JAFSA(ジャフサ)国際教育交流協議会の協力のもと全国の大学への国際交流課などへも広報される見通し。外務省主導で各国の大使館への連絡も行くことになります。
 
むろん、まだまだ課題は山積みです。
 
たとえば、この認証申請は強制ではないということ。認証を取らなくても留学事業者は営業していくことができます。
日本全国に約400社あるとみられる留学事業者には、個人事業主や数名単位で事業を行う小規模事業者も多く、120,000円の申請料を払ってまでこの認証付与を受けるメリットがあるかどうか、「様子見」したいという事業者も多いことでしょう。
 
また、前受け金の保全について、弁済措置までは取られていないこともあります。
認証タイミングは1年に1回のため、認証付与時は好調だったビジネスが1年経過するうちに経営悪化するということも考えられます。そのとき、認証マークがでかでかと入っているパンフレットを信じて契約した消費者の、支払った授業料が保全されるわけではありません。
 
しかしながら、この認証制度、手探りながらもスタートすることが第一歩。
なにしろ、会計まで踏み込んだ審査は初めてのことで、業者にとっては厳しい基準をクリアすることになります。しかも、ウェブサイトやパンフレットの表現が正当な表示になるだけでも、消費者への誤解を避けられます。
 
これから留学を考える方々には、同認証制度の施行によって、新しい選択の基準が増えることになるでしょう。
 
なお、女子Ryuにも、さまざまな留学会社が、留学プランや説明会の情報を掲載しています。悪質な留学業者については弊社独自の基準で掲載をお断りしてきたため、今までには深刻な金銭トラブルをはじめ消費者クレームにつながったことはありません。
 
当面は、同認証の付与を受けているか受けていないかにかかわらず、従来どおりの弊社基準で記事の掲載を継続してまいります。各社の意志により、付与を受けない方針の会社のなかにも、良質な会社が多数存在する可能性があるからです。
 
一方、同認証制度で定められている表示の基準については、下記のとおり、厳しく順守していく所存です。
 
■事業者の名称については商号と等しく、登記簿上の正式な名称を明記すること
■優位性を意味する用語は客観的事実に基づく具体的数値を明記すること
■合理的な根拠のない「最大」「No1」「業界随一」「唯一」等の表示をしないこと
■「●●大使館賛同」「●●省認定」等の表示は事実に基づくこと
■消費者の体験談については事実に即したものとすること(今後は留学時の年月を並列表記するよう順次修正していきます)
 
(文責)
「女子Ryu」編集長 若松 千枝加